ヌートリアが与える農作物への被害と対策について

ヌートリアが与える農作物への被害と対策について

ヌートリアは、日本に生息するネズミの仲間のうち最も大型のげっ歯類です。動物園などで人気の世界最大のげっ歯類「カピバラ」に似た愛嬌のある外見をしているため、一部の層からは「かわいい」「愛くるしい」との評判もあります。

しかし可愛らしさとは裏腹に、実は侵略的外来種として扱われており『世界の侵略的外来種ワースト100』と『日本の侵略的外来種ワースト100』の両方に選ばれています。農作物に大きな被害を与えることで悪名が高く、毎年大きな被害が出ています。2016年には一斉に捕獲されて話題にもなりました。農作物以外でも、例えば電源ケーブルをかじって断線させたり、穴を掘って堤防を壊したりする厄介者です。この記事ではヌートリアの生態や、ヌートリアによる被害や対策についてご紹介します。

■ヌートリアについて

ヌートリアが与える農作物への被害と対策について画像1

ヌートリアは南米原産の大型げっ歯類です。体長50~70cm程度の大きさで、30~40cm程の尻尾を持っています。体重は4.5~7kgで、茶褐色の毛皮です。毛皮に需要があったため外国から持ち込まれ、かつては西日本を中心に飼育されていました。太平洋戦争や朝鮮戦争が終わると毛皮の需要がなくなったため、放置された個体が野生化して繁殖しました。

岐阜県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県・三重県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県で定着が確認されており、今後本州の西側に生息域を広げるという懸念があります。なお、関東や福岡県の一部でも目撃された記録はありますが、定着しているといった情報はありません。寒さには弱く、冬に氷が張るような地域では定着しません。

ヌートリアは泳ぎが得意な半水性で、マコモやホテイアオイといった水生植物を主食にしています。2枚貝を食べることもあり、農作物では水稲を最もよく狙います。通常はつがいで行動し、流れの弱い水辺の土手を掘って巣を作ります。明け方と夕方に活発な活動を行い、日中は巣穴で寝ていることが多いです。

特定の繁殖期がないため、1年中いつでも繁殖を行います。年に2~3回の出産を行い、1回で平均5~6匹の子供を生みます。子供は3日で親と同じようなエサを食べ始め、半年ほどで繁殖可能になります。この繁殖力に加え、日本では特に天敵がいないため個体数が年々増加しています。野生での寿命は5年から8年程度とされており、飼育下では10年程生きた例があります。

 

 

 

■農作物の被害状況

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ヌートリアは水辺に生息するため、水辺に植えられた農作物が被害の対象になります。水稲の被害が非常に多く、若い苗ほど柔らかくて食べやすいため被害を受けやすくなっています。その他にもニンジン・サツマイモ・キャベツ等の野菜類が食害の対象となっています。

ヌートリアによる農作物への食害は年を追う毎に深刻さを増してきており、平成20年度の被害額は全国で1億2千万円以上となってしまいました。特に被害が多いのは近畿地方です。兵庫県では平成20年度に、全国被害額の半分弱にあたる約5千万円の被害を受けました。被害の報告がされていないか、発覚自体されていない被害もあると思われ、実際の被害額はさらに多いと予想されています。

直接的な食害以外にも、ヌートリアによる被害は存在します。ヌートリアは畦道(あぜみち)に穴を掘ることがあり、畦道が壊れたり、穴から農業用水が漏れたりして農作物に被害が出ることがあるのです。

 

 

 

■対策

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増大するヌートリアの被害に対して、各都道府県では主に3つの対策を行っています。

1.猟友会による捕獲
地元の猟友会がヌートリアを捕獲します。

主に罠を設置してヌートリアの捕獲を試みます。

2.箱罠を使い、農家等が個人で捕獲
農作物を扱う農家自身が箱罠を設置し、ヌートリアの捕獲を狙います。農家等が積極的に捕獲を行うように、箱庭の貸出を行ってくれる自治体もあります。なお、岐阜県岐阜市の場合、平成20年度の捕獲頭数264頭中163頭が個人で捕獲されています。

3.侵入防止の柵等を設置。
ヌートリアの侵入を阻む柵やネットの設置を推進する対策です。適切に設置しないと、柵の下の土を掘ったり、ネットを食い破ったりされて農地に侵入されてしまいます。

 

 

■まとめ

ヌートリアは人間が毛皮をとるために、わざわざ南米から日本に持ち込まれた動物です。人間の都合で連れてこられたにも関わらず、不要となって野生化すると駆除の対象となってしまうと言うのは理不尽とも言えます。しかし農家の方にとって、ヌートリアよる被害は死活問題です。被害を防ぐためには、対策を取らざるを得ません。

ヌートリアが爆発的に増えて駆除対象となってしまったのは、明らかに人間の責任です。今後このような例が増えないようにするのは、人類全体の責務と言えるでしょう。

 

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